コラム

男女交際と慰謝料

損害・加害行為との因果関係②

弁護士 小島梓

 前回のコラムにてご説明したように、夫の不倫によって被った妻の精神的苦痛が不貞行為に基づく損害賠償請求における「損害」の一つになりますが、最終的には、この苦痛を金銭に換算する必要があります。
 今回は、この金額算定の要素などについてご説明します。

 まず、現在の日本の裁判において、妻の精神的苦痛を金銭に換算した場合、どの程度の金額になるのかというところは、気になる点ではないかと思います。
 結論から申し上げますと、個別の事案の事情と判断する裁判所によりけりという状況なのですが、100万円~300万円の範囲に入ってくることが多いかと思います。

 金額を増減させる要素には様々なものがありますが、不倫が発覚したことにより夫婦が別居や離婚という事態になり、形式的にも分かる形で、夫婦関係に悪影響が出てしまった場合には高額になる傾向はあります。

 他方で、不倫相手の女性側から、よく「不倫をした夫からしつこく誘われたので仕方なく付き合った」「頻繁に会いたいといってきたのは不倫をした夫の方だ」といういわゆる不倫関係の主導性についての主張がなされます。不倫関係を主導していたのは自分ではなく不倫をした夫の方なので、自分は悪くないという趣旨のことをおっしゃる方も少なくありません。

 確かに、どちらが主導したかという要素が金額の増減に影響を与えることがないわけではありませんが、立証が難しかったりすることもあり、金額に大きな影響を与える要素ではないとお考えいただいた方が良いと思います。

 総じて、不倫をしてしまった側の事情で慰謝料の減額を実現することは難しい傾向にあります。

 そのため、真実は、不倫をした夫側の積極的なアプローチにより交際が始まり、その後も夫側から頻繁に連絡があったので、関係が続いてきたという事情があったとしても、これにより金額が大きく減額されるという可能性は低いため、結果的に高額の慰謝料が認定されてしまうことになりかねませんので、ご注意ください。

 次回は、「損害」に関して、妻の精神的苦痛(慰謝料)以外の費目について簡単にご説明したいと思います。