コラム

裁判例 不貞慰謝料請求 男女交際と慰謝料

性関係を伴わない交際について、慰謝料10万円を認めた裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京簡易裁判平成15年3月25日判決をご紹介します。

 事案は以下のとおりです。
・原告とAは婚姻関係にある。
・被告とAは、平成13年10月6日頃、池袋のカラオケに行った。
・Aは、平成13年10月7日、横浜のCという店で被告に3万円程度のネックレスを買い与えた。
・被告とAは、平成13年10月18日、原告には内緒で、大阪に日帰りで遊びに行った。
・被告とAは、Aの誕生日の前日である平成13年11月22日、池袋のデパートの中にある料理屋で昼の食事をした。
・そのころ、被告はAに、合わせて2万円程度の手袋とアスコット・タイをプレゼントした。

 裁判所は「被告とAとの間に肉体関係があったことを認めるに足りる証拠はないが、被告とAとの交際の程度は、数万円もするプレゼントを交換するとか、2人だけで大阪まで旅行するなど、思慮分別の十分であるべき年齢及び社会的地位にある男女の交際としては、明らかに社会的妥当性の範囲を逸脱するものであると言わざるを得ず、恋愛感情の吐露と見られる手紙を読んだ原告が、被告とAとの不倫を疑ったことは無理からぬところである。被告のこれらの行為が、原告とAとの夫婦生活の平穏を害し原告に精神的苦痛を与えたことは明白であるから、被告は原告に対し不法行為責任を免れるものではない。」とし、慰謝料については「本来、夫婦は互いに独立した人格であって、平穏な夫婦生活は夫婦相互の自発的な意思と協力によって維持されるべきものであるから、不倫の問題も、基本的には原告とAとの夫婦間の問題として処理すべきものと考えられる。」と述べ、被告とAとの交際が上記の程度であって、その期間も約半年に過ぎないこと、原告とAとの婚姻関係は最終的には破綻することなく維持されていること等の事情を勘案すると、慰謝料は、10万円が相当と判断しました。