コラム

裁判例 不貞慰謝料請求

探偵の調査費用の一部を損害と認めた裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京地裁平成20年12月26日判決をご紹介します。
 事案は以下のとおりです。
・原告は、昭和60年1月18日、Aと結婚した。
・Aは、平成12年ころ、ホステスとして勤務していた被告と知り合い、平成13年ころから、被告と肉体関係を持つようになり、約1年半にわたり、か月に1,2回の割合でホテルで関係を持った。
・Aは、被告との不貞関係が原告に知れてしまい、また転職をして生活のリズムが変わったこともあって被告とは会わないようになった。
・Aは、平成17年7月ころから、銀座にクラブのママとなった被告の店を訪れるようになり、肉体関係を持つようになった。
・Aと被告のそのような関係は平成19年8月まで続いた。
・原告としては被告の素性も分からなかったことから、その実態を突き止め、Aに証拠を突きつけない限り、Aは本当のことを言わず、Aの目を覚まさせることもできないと考え、そのための行動を起こすこととして、原告代理人弁護士に相談し、またAの行動を探偵に調べてもらうこととした。
・原告は探偵社に調査の報酬等として125万7605円を支払った。
・Aとしては難しいかもしれないとの思いはあるものの原告との婚姻を継続したいとの考えを有している。
・原告は、Aに対する不信感が強く、離婚するしかないという気持ちがあるものの、原告の両親もAの母親も高齢であり、心配を掛けたくないとの思いも強く、何とかAを信じてもう少しがんばってみようとの考えから離婚や別居には至っていない。

 裁判所は「前記認定事実によれば,被告とAの不貞関係は,1年半くらい続いた後,原告の知るところとなったこともあり,いったん中断したものの,再び始まり,2年くらいにわたりその不貞関係が続いたものと認められる。
 そうすると,1度のみならず2度も被告とAの長期間にわたる不貞関係が続いたことを知り,しかも,いったんはAから離婚の意思を告げられた原告としては,被告の2度にわたる不貞行為により,多大の精神的苦痛を被ったことは明らかというべきである。
 そして,前記のとおり,消滅時効が完成しているとは認められないものの,不貞関係がいったん中断した時点では,原告の日常生活は一見平穏な状態となったものであり,その時点では,原告が相手の女性を特定した上で積極的に慰謝料請求をすることまでは考えていなかったと認められる点や,原告とAが現時点では別居や離婚には至っていない点などの事情も斟酌すると,原告の精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては,200万円をもって相当というべきである。」と判断しました。
 探偵費用については「原告としては,被告の氏名が本名かどうかも分からず,その素性も明らかでなかったことから,これを明らかにするために探偵社に調査を依頼したものであり,その調査により,被告とAが一緒に旅行した際の状況や,被告の自宅にAが一晩滞在した際の状況などが明らかになったものであって,かかる調査は,被告による不貞行為の存在を立証するための調査として必要性のあったことは明らかというべきである。
 もっとも,原告が自らの判断により,多額の調査費用を支出した場合,そのすべてが直ちに被告の不法行為に起因する原告の損害となるというのは不合理というべきであって,通常必要とされる調査費用の限度で被告の不法行為と相当因果関係のある損害となると認めるのが相当である。
 そして,前記認定の被告とAの不貞関係の状況や原告が探偵社に調査を依頼した状況等に照らせば,調査費用のうち100万円をもって,被告の不法行為と相当因果関係のある原告の損害と認めるのが相当である。」と判断しました。

 探偵の費用については、損害として認めない裁判例や、全部または一部のみを損害と認める裁判例、慰謝料の考慮要素とする裁判例等に分かれています。