コラム

配偶者の不倫に対する対応

配偶者が不倫をしているかもしれない③~証拠の中身~

弁護士 小島梓

 前回のコラムにおいて,配偶者が不倫をしているかもしれないと疑われたとき,その後の展開を考えたときに,不倫の証拠が重要であること,動かれるタイミングも重要になってくることなどご説明してまいりました。
 では,仮に証拠が重要だとして,どのような証拠が必要になってくるのでしょうか。

 さらに,一定の証拠は確保されているが,不十分というケースも見受けられます。
 例えば,ご相談者様の中には,証拠はありますとおっしゃって,ご相談にいらっしゃり,当方が確認すると,それだけでは残念ながら戦えないということがよくあります。
 つまり,証拠の中身も重要になってくるのです。
 そこで,今回は,最近の裁判例の動向もにらみつつ,証拠の内容,中身について簡単にご説明していきたいと思います。

(1)よくある証拠
 ご相談にいらっしゃるお客様が,保管しておられる証拠として,最近多いのは,偶然見てしまった配偶者と不倫相手とのLineのやりとりなどです。
 長年ご夫婦関係を続けていれば,Lineのやりとりを見れば,それが何気ない日常会話に過ぎなかったとしても,配偶者がやり取りをしている相手と特別な関係か否かは何となくわかってしまうものかと思います。

 実際,ふたを開けてみたら,不倫をしている事実があったということも多いです。

 しかし,残念ながら,裁判では,仲良く日常会話をしているようなLineのやりとりのみでは,不倫の証拠としては,不十分とされるケースがあります。
その理由を最近の裁判例をご紹介しながらご説明します。

(2)裁判例等における「不貞」行為の定義と認定
 裁判例等において,不倫は,「不貞」行為と表現され,基本的には不貞行為とは,「配偶者のある者が,自由な意思に基づいて,配偶者以外の者と,性的な関係を結ぶこと」と考えられています。

 このため,基本的には,裁判で,不貞行為を認定してもらうためには,配偶者と異性との肉体関係を示す証拠が必要になってまいります。仲良くLineをしているだけのやり取りになりますと,不十分となってしまう可能性が出てくることになります。

 ただし,最近では,裁判で,婚姻関係を破綻させる可能性のある異性との交流や接触も不貞行為に該当すると判断される場合も出てきています。
 そのため,Lineやメールのやり取りだけであってもその中身次第では認定してもらえる可能性もございますし,いくつかの証拠を組み合わせれば認定してもらえる可能性が出てくる場合もございます。

 当方では,これまでの経験から,どのような証拠があれば十分なのか,逆にない場合には,どういった方法で,どのような証拠をとってきていただきたいか,また証拠がとれるまではどういった対応をしていただきたいかについてアドバイスを差し上げるようにしております。早い段階で一度ご相談いただければと思います。

 繰り返し申し上げている通り,配偶者が不倫をしているかもしれないと思われたとき,お客様が何を望まれるかによって必要な対応は変わってまいります。
 今後の夫婦関係についてどうされたいかについては,よく考えていただきたいことの一つになります。そこで,次回は,今後の夫婦関係について何を考えていただきたいかをご紹介します。