コラム

裁判例 不貞慰謝料請求

再度の不貞行為についての違約金条項が無効とされた裁判例

弁護士 幡野真弥

 配偶者が不貞した相手と、慰謝料について示談する場合、再度、不貞行為を行った場合の金額についても合意して、示談書に金額を明記することがあります。これは「違約金条項」と呼ばれています。
 このような違約金条項は、公序良俗に反して無効となることがあります。今回は、東京地裁令和 2年 6月16日判決をご紹介します。

 事案は以下のとおりです。
 平成30年11月8日に、原告の配偶者が、被告と不貞行為を行いました。
 平成30年11月15日、原告と被告示談書を作成し、その示談書の中には以下の条項がありました。
 「被告は、本契約締結日以降、被告から原告の配偶者への私的な接触を一切持たないことを約束する。万が一これに違反した場合には、被告は、原告に対し、以下のとおりの違約金を支払うものとする。
  a 電話やメール・手紙、面会その他の方法の如何を問わず、私的な接触を行った場合、1回につき30万円
  b 不貞行為に及んだ場合、1回につき100万円」  

 平成30年12月20日、原告と配偶者は別居し、平成31年1月15日、原告は離婚調停を申し立て、4月2日に離婚訴訟を提起しました。
 一方で、被告は、平成31年1月25日、再度、原告の配偶者Aと不貞行為を行いました。

 裁判所は、以下のように判断しました。
「本件違約金条項は,被告とAとの不貞行為が原告の権利ないし法益を侵害することを前提とするものであるところ,不貞行為時において,既に婚姻関係が破綻していた場合には,それにより原告の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法益が侵害されたとはいえず,特段の事情のない限り,保護すべき権利又は法益がないというべきである。そうすると,本件違約金条項のうち,原告とAの婚姻関係破綻後について定めた部分は,公序良俗に反し無効と解するのが相当である。」
 「被告とAは,平成31年1月25日,不貞行為に及んだことが認められる。(中略)原告は,平成30年11月12日頃,Aが被告とホテルに宿泊したことを知り,Aとの婚姻関係の修復は困難であり,離婚せざるを得ないと考えるに至ったこと,原告とAは,同年12月20日,別居したこと,原告は,平成31年1月15日,離婚調停を申し立てたことが認められる。これらの事実経過によれば,被告とAが不貞行為に及んだ同月25日当時,原告とAの婚姻関係は破綻していたと認められる。
 したがって,原告は,被告に対し,平成31年1月25日の不貞行為を理由として,本件違約金条項に基づく違約金を請求することはできないと解すべきであるから,被告は,違約金支払義務を負わない。」

 婚姻関係が破綻した後の不貞行為については、慰謝料は請求できないというのが最高裁判例ですが、今回の裁判例は、再度の不貞行為について違約金条項を定めて示談していても、このような条項は無効となり、慰謝料は請求できないと判断しました。