コラム

裁判例 不貞慰謝料請求

離婚協議書の清算条項を錯誤無効とした裁判例

 離婚協議書には、「甲と乙は、甲と乙との間には、本件離婚に関し、本離婚協議書に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。」といった条項を設けます。
 この条項は、清算条項と呼ばれており、この条項があることにより、離婚協議書に記載されていない事項について、他方について請求等を行うことができなくなる効果があります。

 この精算条項を無効と判断した、東京地裁平成28年 6月21日判決をご紹介します。
 元夫が、不貞相手に婚外子を妊娠させていたのを隠して元妻に離婚を申し入れ、協議離婚書を作成させて離婚に至ったという事案です。離婚協議書には、「甲と乙は、本契約に定めた以外には相手方に対し、何らの請求をしないことを確認した。」との定めがありましたので、元妻は元夫や不貞相手に対し、慰謝料を請求できるかが問題なりました。
 裁判所は、元夫が不貞相手との継続した不貞関係や婚外子の妊娠の事実を隠して清算条項を含む協議離婚書を元妻に示し署名させたことは、元夫が慰謝料の支払を免れて不貞相手との再婚を果たすためであったものと認められ、その清算条項は元妻の要素の錯誤により無効であるから、元妻は被告らに不貞行為による慰謝料を請求できるなどとして、その額を200万円と認定しました。