コラム

裁判例 不貞慰謝料請求

不貞行為について、配偶者の積極性や不貞相手が夫婦関係を故意に害することを意図していたというものではないこと等を考慮し、慰謝料100万円と判断した裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京地裁平成23年 1月11日判決をご紹介します。
 原告が妻、Aが夫、被告が夫Aの不貞相手です。

・原告とAは、平成元年に婚姻した夫婦であり、2子を設けていました。
・Aと被告は、平成19年秋ころ、携帯電話の出会い系サイトで知り合いました。
・Aは、月収を原告に管理させていましたが、収入が減少したことを理由として住宅ローンや光熱費等の引落し分以外は原告に生活費を入れなくなり、原告は、自己の収入で生活費を賄うようになりました。またAは、そのころから、休日は自宅を不在がちになりました。
・Aは、平成21年9月、原告に相談することなくバイクを購入することを決め、被告にローンの保証人となることを依頼し、被告は当初これを断りましたが、Aが執拗に頼むことからこれを承諾しました。
・原告は、ローンの申込書を見付け、連帯保証人欄に被告の氏名が記載されていることを発見し、被告がAと親密な関係にある者ではないかと考えました。
・原告は、Aが被告と不貞行為に及んだと考え、Aに対して離婚を求めるような態度をしたことがありましたが、現在はAとの夫婦関係を改善していくこととし、婚姻関係を維持しています。
・Aは、原告に対し、被告との間で約2年間にわたり親交を深め、男女の関係があったことを認めていました。被告は、不貞の事実を否認していました。

 裁判所は「被告は,Aと出会い系サイトで知り合った平成19年秋ころから平成21年10月ころまで,Aと連絡を取り合っていたものであり,その間に被告との間で男女関係があったことをAが認めていることや,高額な本件立替払契約について被告が連帯保証人となったことに照らしても,単に6,7回会って食事をしただけにすぎないとする被告本人の供述はたやすく信用できず,反対に,原告及び長女と話をした際に,被告がAと男女関係にあったことを否定せず,男女関係にあったことを仄めかすような言動をしたとの原告本人の供述は,内容が具体的である上に前記のような諸事情とも整合するもので信用できるというべきであり,これらを総合すると,Aと被告との間には前記期間に男女関係があったと推認するのが相当である。」と判断しました。
 慰謝料については「被告は,自ら携帯電話の出会い系サイトを利用し,そこで出会ったAに配偶者がいることを知りながら安易に不貞行為に及んだものと認められ,これにより原告が相当程度の精神的苦痛を被ったことは明らかであるが,他方で,Aも同サイトを利用して積極的に不貞行為に及んだもので,被告が原告とAの夫婦関係を故意に害することを意図していたというものではないし,不貞行為の詳細はこれを認定するに足りる証拠がなく,その態様がことさら悪質であるとの事実を認定することはできないというべきである。また,原告も,Aが被告と知り合ったころから生活費を入れなかったり自宅を不在がちになったにもかかわらず,Aと話合いを行って関係を改善することなくこれを放任するなど,必ずしもAとの関係が円満であったとはいい難い面があったことを否定できないといえる。」とし、慰謝料額は100万円と判断しました。