コラム

裁判例 不貞慰謝料請求

いわゆるダブル不倫の事例で、各配偶者の慰謝料を150万円とした裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京地裁平成25年11月29日判決をご紹介します。

 二組の夫婦(夫Aと妻B、夫Cと妻D)の間で、BとCが不貞行為を行いました。

 そこで、夫Aが夫Cに対して損害賠償を請求し、妻Dが妻Bに対して損害賠償を請求し、2つの事件は併合され、同じ裁判官により審理されました。

 裁判所は、慰謝料について、以下のように判断しました。
 「被告らが不貞関係に及ぶまでの間、約10年間にわたる原告Aと被告Bとの間の婚姻生活に特段の問題があったことはうかがわれないこと、被告らの不貞関係は約11か月間にも及び、被告らは互いに離婚した上で結婚することを望むほどに深い仲となり、ひいては被告Bが妊娠する事態となっていること、被告らの不貞関係が原告Aに発覚した際、被告Bは原告Aに離婚を求め、被告らはその後も不貞関係を継続したこと、被告Cの原告Aへの対応は誠実なものとは言い難い上、原告Aによる甲事件本訴の提起後、被告Cが原告Aに対する甲事件反訴を提起していることなどからすれば、真に原告Aに対する謝罪の意思を有しているかは疑わしいこと、他方、原告Aと被告Bとは、未だに別居や婚姻関係破綻といった事態には至っていないことなどの事情を総合的に考慮すると、被告らの不貞関係により原告Aが被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては、150万円が相当である。」
 
「被告らが不貞関係に及ぶまでの間、約8年間にわたる原告Dと被告Cとの間の婚姻生活に特段の問題があったことはうかがわれないこと(略)、被告らの不貞関係は約11か月間にも及び、被告らは互いに離婚した上で結婚することを望むほどに深い仲となり、ひいては被告Bが妊娠する事態となっていること、被告らの不貞関係が原告Dに発覚した際、被告Cは原告Dに対し離婚を求め、被告らはその後も不貞関係を継続したこと、原告Dは、不貞関係発覚後、不眠、食欲不振などの症状が出ていること、被告Bは原告Dからの謝罪の求めにも応じておらず、本人尋問においても被害者意識を露わにしており(略)、真に原告Dに対する謝罪の意思を有しているかは疑わしいこと、他方、原告Dと被告Cとは、未だに別居や婚姻関係破綻といった事態には至っておらず、被告Cの今後の言動次第で婚姻関係が悪化する可能性はあるものの、そのような事態についてまで被告らの不貞関係との直接の因果関係を肯定するのは困難であることなどの事情を総合的に考慮すると、被告らの不貞関係により原告Dが被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては、150万円が相当であ(る)」。

 ダブル不倫の慰謝料の裁判例として、参考になります。