コラム

裁判例 不貞慰謝料請求

婚姻期間が短いこと、不貞の期間が短いこと等を理由に慰謝料を70万円とした裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京地裁平成22年 2月 1日判決をご紹介します。

 事案の概要は以下のとおりです。
・原告(妻)は、Aと婚姻した。
・被告は、平成20年2月、夫Aと性交渉を伴う交際を開始した。
・被告は、遅くとも平成20年3月、Aから、婚姻していることを知らされたが、その後も交際を続けた。

 このような事案で裁判所は、
「被告がAとの交際を開始した時点で,原告とAとの婚姻関係が破綻していたと認めるに足りる証拠がないこと,また,被告が,Aとの交際に消極的であったとか,交際を止めようとしていたとまで認めるに足りる証拠はないこと,さらに,証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成20年4月16日ころから,不安障害との診断により,メンタルクリニックに定期的に通院して薬物療法等の治療を受けるようになったことや,原告とAとは離婚こそ成立していないものの,婚姻関係自体は破綻に至っていることなどを認めることができるが,一方で,原告とAは,同棲期間がそれなりにあったものの,婚姻期間自体はそれほど長くはないこと,原告とAとの婚姻関係が完全に円満であったとまではいえないこと,被告は,当初はAに配偶者がいることを知らずに交際を開始しており,その交際期間も合わせて2か月程度に過ぎなかったことなどからすると,被告の不法行為自体が原告に被らせた精神的苦痛の程度や原告とAとの婚姻関係破綻に影響した程度等に鑑みて,原告の精神的苦痛を慰謝するために被告が原告に対して支払うべき慰謝料としては,70万円を認めるのが相当である。」と判断しました。

 婚姻関係が破綻に至っているケースだと、慰謝料は100万円を超えることが多いですが、本裁判例のように、元々の婚姻期間の短さや、夫婦関係が円満であったかどうか、不貞行為の期間の短さなどの事情によっては、慰謝料はそこまでの金額には至らないこともあります。