コラム

裁判例

不倫関係における名誉棄損②

弁護士 長島功

 今回も不倫関係をきっかけとして、名誉棄損が問題になった実際の裁判例をご紹介しようと思います。
 事案の概要は次のとおりです。

 夫が、女性(以下、「A」)と不貞行為に及んだことから、妻がAに対して、損害賠償訴訟を請求しました。
 この妻の損害賠償請求自体は認められたのですが、その裁判の中で、Aの側からも妻に対し反訴が提起され、その反訴も一部ですが認められています。このAからの反訴で問題になったのが、名誉棄損です(実際の裁判では、プライバシー権の侵害も認められています)。
 具体的には、妻の以下の行為が問題となりました。
 妻は、Aの父親に対して、手紙を送っており(妻の父親名義で送られていましたが、妻の関与が裁判では認められています)、その中でAが、娘夫婦の家庭を壊しかけているといった内容が記載されていました。
 また、妻は夫の父親に対しても、夫がAと不貞行為を行っていることや、AのSNS上に掲載されていた画像を資料として送る等しました。
 その他、妻は、Aの知人にもメッセージを送信する等したところ、裁判所はこれらの行為について、Aの社会的評価を低下させるもので、名誉棄損にあたるとし、また同時にプライバシー権の侵害にもあたると判断して、慰謝料の支払いを命じています。

 不貞行為が行われた場合、配偶者や、その不倫相手の親族や知人といった周囲の人に、不貞の事実を告げるという行為は、たまに見られる行為です。心情的にそのような行為に及びがちですし、不貞行為を止めさせる目的等から、周囲に連絡をしてしまうというケースもあろうかと思います。特に親族に対しては、抵抗なく言いやすい面もあるように思います。その全てが、不法行為になる訳ではありませんが、内容によっては、このように紛争が拡大してしまいますし、冷静な判断が難しいこともあって、つい行き過ぎた行為に及びがちです。

 行為に及ぶ前に、一度立ち止まるとともに、まずは弁護士にご相談されることをお勧めします。