コラム

裁判例 不貞慰謝料請求

離婚成立したとの夫の言動を信じた被告に過失があると判断した裁判例

弁護士 幡野真弥

 不貞行為を原因とする慰謝料が発生するためには、原告夫婦が婚姻中であると被告が認識していたか(故意)、または認識するべきであったのに認識しなかった(過失)といえなければなりません。
 東京地裁平成21年 1月27日判決は、過失を認めた珍しい裁判例です。 

 原告とAは平成15年2月9日に婚姻届出をした夫婦でした。
 被告とAは、同じ職場で、平成19年10月末頃から、結婚を前提に交際するようになりました。
 Aは、被告に対して交際を申し込む前提として、妻(原告)とは離婚したと述べていました。
 交際は原告の知るところとなり、慰謝料を請求する裁判となりましたが、裁判で、被告は、自分には故意・過失がなかったと主張しました。

 裁判所は、被告が、Aと結婚することができるものと信じて行動(周囲へのメールによる結婚の報告や、両親への報告のための飛行機の座席の予約)していたことから、被告は、Aが既に離婚しているか、少なくとも離婚の合意が成立したと考えていた可能性が十分にあり得るとして、被告の故意は認定しませんでした。
 しかし、「被告が、平成19年9月時点では、Aと原告との婚姻関係が継続していることを知っていたことは明らかであり、被告は、それから僅か1か月程度経過したのにすぎない同年10月末日の時点でAから原告とは離婚したと言われ、それを信じたというのであるが、そのように事態が急激に進展するということ自体、不自然の観を免れないのみならず、Aと原告との間で、離婚の条件についてどのような合意がされたのかについて全く説明がなかったというのも不自然であり、被告としては、本当に離婚の合意が成立していたのかどうかについて疑問を抱くのが当然であったというべきであり、それにもかかわらず、被告は、上記のような点について確認をしようとしなかったというのであるから、この一点を捉えても、Aと原告との離婚又はその合意が成立したと考えたことには過失があったといわざるを得ない」と判断し、過失を認め、慰謝料としては80万円が認められました。