コラム

裁判例 男女交際と慰謝料

妊娠中絶手術に伴う慰謝料を認めた裁判例

弁護士 幡野真弥

 今回は、東京地裁令和元年12月19日判決をご紹介します。
 原告と被告は交際していたところ、原告は被告の子を妊娠し、人工妊娠中絶手術を受けました。
 原告は、「被告は中絶に際して何ら原告の身体的・精神的苦痛及び経済的負担を軽減するなどの行為をしなかった」などの主張をして、被告に対し、損害賠償を求めました。

 裁判所は「女性は,妊娠に至っても種々の事情から中絶手術を選択せざるを得ない場合,そのような選択決定をしなければならない事態に立ち至った時点から,直接的に身体的及び精神的苦痛にさらされるとともに,その結果から生ずる経済的負担をせざるを得ない。もっとも,それらの苦痛や負担は,男女が共同で行った性行為に由来し,その結果として生ずるものであるから,それらの不利益は男女が分担すべき筋合いのものといえる。そこで,女性は,子の父となった男性から,それらの不利益を軽減し,解消するための行為の提供を受け,あるいは,女性と等しく不利益を分担する行為の提供を受ける法的利益を有し,この利益は,女性が男性に対して有する法律上保護される利益というべきであり,他方,男性は女性に対して前記行為を行う義務を負い,男性がこれらの不利益を軽減し,解消するための行為をせず,あるいは,女性と等しく不利益を分担することをしないという行為は,上記法律上保護される利益を違法に侵害するものとして,不法行為としての評価を受け,これによる損害賠償責任を免れないものと解される。」と判断し、慰謝料100万円を認めました。